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【自然】地域の里山再生
里山とは?
〈里山の定義〉
里山とは、奥山(人の手が入らない原生林)と人里の間に位置し、人々が生活や経済活動のために古くより恵みを得ながら共存してきた山地や草地等の領域をさす[注1][i]。
〈里山の面積〉
里山は日本国土(3,779万ha)の約6割(2,412万ha)を占めると言われる。また、日本の耕地面積(437万ha)の内約4割(167万ha)は里山に存在する[注2][ii]。
〈里山の多面的機能〉
農林水産省の発表や最新研究によれば、里山には少なくとも次の機能があるとされる[注3] [注4][iii][iv]。
①洪水や土砂崩れ等の災害を防ぐ機能(土の流出を防ぎ、川の流れを安定化)
②地下水を作る機能
③暑さをやわらげ冷涼な気候を作り出す機能
④海を保全し生物多様性を守る機能
⑤里山にしか生息できない多くの生き物のすみかとなる機能
⑥景観を保全する機能
⑦里山で受け継がれてきた文化を伝承する機能
→里山の最も大きな役割は、国土のほとんど7割が山である日本において、人を含めた動物の生存に不可欠な、豊富な水、食料、衣服、住健材、健康な(酸素濃度の高い新鮮な)空気、適温を提供し続けられてきた機能である。里山無しには、人も動物も持続可能に生きて来ることができなかった。
[i] [注1]環境省 https://www.env.go.jp/nature/satoyama/top.html
[ii] [注2]農林水産省 https://www.maff.go.jp/j/nousin/tyusan/siharai_seido/s_about/cyusan/
[iii] [注3]農林水産省 https://www.maff.go.jp/j/nousin/noukan/nougyo_kinou/index.html
[iv] [注4]国立環境研究所 https://www.nies.go.jp/whatsnew/20211025/20211025.html

01
耕作放棄地/荒廃農地の解消
温暖多湿な日本では、農地は耕作されなくなれば、ススキやササ、背高泡立草など少数の植物が占有するやぶとなり、時には数年で山林化が進み山林は人の手が入らなければ少数の樹木が占有する最終林まで遷移する。
→牛が草を食べることにより、藪がなくなりすっきりする。
02
農地保全
牛は草を食べるだけでなく、牛糞や、牛が土壌を踏みつけ、土壌をかき混ぜることによる土壌改良効果がある[注13]
[注13]Sand County Foundation https://sandcountyfoundation.org/news/2023/soil-health-rotational-


03
景観美化
人の手が入らない藪は景観を悪化させるが、牛が草を食べることで里山らしい美しい草地が復活し、景観が保たれる。
04
野生動物との棲み分け
山と人里との間に牛が存在することで、野生動物の人里への侵出を防止する緩衝地帯(カウベルト)となる。野生動物の生息範囲を限定するため、繁殖爆発も防ぐ。個体数を適切なバランスに保つ。一時的な食物増で繁殖爆発した結果、生態系のピラミッドが崩れ動物自身の首を絞める、時には餌不足で人里に降り、捕殺される・事故死する動物を減らす。人里と野生動物が生息する領域の住み分けを可能にする。


05
病害虫大量発生の抑制
緩衝地帯の存在は病害虫の大量発生を防ぎ、人里への侵出も抑制する。森林、藪で発生する病害虫は、作物や病害虫の他、人・ペット・家畜への致命的感染症を運搬する虫(マダニ等)。
06
火災予防
牛が草を食べることで冬期の耕作放棄地の枯草が減り、火災の自然発生や、人の手による野火の無意図的燃え広がりを防ぐ。


07
不法投棄等の犯罪予防、治安回復
藪が無くなり見通しが良くなることで、不法投棄等の犯罪が起きにくくなり、治安が回復する。
(実際、もーもーワールドスタート前に農地を調査したところ、大量の不法投棄物が出てきた(空き缶、ビン、ペットボトル、家電、傘など粗大ゴミ、廃車など)が、放牧開始後はなくなった)(引用)
08
植生の変化と生物多様性
-
牛の導入前はススキ、クズ、背高泡立草、ササなどが2m以上の高さまで成長し、土地を占有している状態だが、牛がこれらの植物を食べる。すると土壌表面近くまで日が当たるようになり、背の低い植物が復活する。牛は採食時草の土壌近い部分は食べ残すため、元あったススキ等も淘汰はされずに背を低くして残る。
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牛が食べた植物の種は糞となってその土地に還り、再び発芽する[注9][i]。過放牧とならないよう放牧面積や区画当たりの放牧期間を調整することで、草地は何度でも芽吹き復活する。
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また、牛は落糞地の周辺の草は食べないため不食過繁地ができる[注10][ii]。牛の好みによって食べない草もあるため、草地はモザイク状に草丈の高い箇所、低い箇所ができる。草地環境の多様さを生む。
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植物が多様になり、環境も多様になると、その多様な植物を食べる多様な虫、その虫を食べる虫や両生類、それを食べる鳥等が増える。
[i] [注9]日本草地学誌https://www.jstage.jst.go.jp/article/grass/52/1/52_KJ00004304238/_article/-char/ja/
[ii] [注10]阿蘇ペディアhttp://www.aso-dm.net/?%E7%89%9B%E7%B3%9E


09
里山再生
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里山の草地を維持するために、人の手で草刈りをし続けるのは不可能。年に3~4回毎年、増え続ける広大な耕作放棄地を草刈りし続けるのは、1日40kmを普通に歩いていた[注21][i]昔の日本人のような体力もなく、過疎化高齢化の進む現代の里山ではできない。牛に食べてもらうのが最も効率的。柵さえ作り、水を用意すればあとは牛が食べてくれる。
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日本の里山は丘陵であり、トラクター等で大規模生産はできず、機械化による管理の効率化や生産性向上は望めない。牛は丘陵でも関係なく、細い道も斜め40度の傾斜も難なく上り下りすることができるため、こうした条件不利地に最適である。
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[i][注21]横浜国道事務所https://www.ktr.mlit.go.jp/yokohama/tokaido/02_tokaido/04_qa/index4/answer1.htm
10
山林整備
戦後国全体で杉と檜だけを植え作ってきた単一針葉樹を間伐し、広葉樹を植林することにより森を再生する。植林後の下草刈りも、牛は手伝ってくれる。


11
教育/観光/健康増進の資源
美しい自然、生物多様性が回復した里山は自然教育に最適であり、各種自然体験学習やツアーを実施することで観光客を集めることもできる。
里山は植物が光合成するため酸素が多く空気は清浄で、植物が蒸散するため夏でも涼しい。微生物も豊富で、免疫力向上も期待できる。